95. 高村光太郎と三上参次が住んだ町:駒込林町:『本郷駒込林町地圖』

 
高村光太郎旧居跡:駒込林町25番地(現在の文京区千駄木5丁目22番地)


三上 参次邸宅跡:駒込林町169番地(現在の文京区千駄木5丁目13番地)

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♪神田神保町の秦川堂書店で入手してあった『本郷駒込林町地圖』(東京市聯合青年團林町分團)をPDF化しました。

♪『本郷駒込林町地圖』には,戦前の番地が入っています。個々の地所の境界を知ることができます。駒込林町の町内全体の地番がわかります。「駒込中学校(236番地)」,「林イナリ神社」,「杏林舎印刷工場(172番地)),「鶴ノ湯(227番地)」の具体的な場所が記されています。


♪三上参次の邸宅は,169番地にありました。「林イナリ神社」の前の路地を進んだ右側が169番地です。さらに進むと「鶴ノ湯」の銭湯があります。

♪地図でみると近くですが,当時の屋敷は,それぞれの敷地が広く,千駄木界隈は,木々も鬱葱としていたでしょうから,「鶴ノ湯」も,いまとは大分違う風景のなかにあったのでしょう。

♪駒込林町の地図に載った「鶴ノ湯」は,いまでも,「鶴の湯」の看板を挙げて営業しています。(2014年1月2日廃業)「鶴の湯」の横の小路には,数日前に振った初雪が,まだ,残っていました。両脇から軒先が迫っています。路地を抜けると,しばらくして,見慣れた都立駒込病院前のバス通りにでました。本郷通りと不忍通りを繋ぐ道です。ほっとして,一息つきました。

♪動坂上の交差点から富士神社の前を通って本郷通りへ戻りました。「高村光太郎旧居跡」「三上参次邸宅跡」「富士神社」「鶴の湯」の場所を,Googleマイマップ「本郷界隈:医史跡案内」に追加しました。

(平成25年1月19日 追加)

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二つの林町(駒込林町・小石川林町)

1.千駄木5丁目(旧駒込林町)周辺地図:

2.千石2丁目(旧小石川林町)周辺地図:

♪文京区内には、旧町名で林町が二カ所ありました。駒込林町(現在の千駄木5丁目と3丁目の一部)と小石川林町(現在の千石2丁目)です。駒込林町は、明治2年(1869)から明治44年(1911)までの間は、駒込千駄木林町といいました。(参考文献1、2)

♪この駒込林町に高村光太郎と三上参次の住まいがありました。二人のお墓が、染井霊園にあることは、「江戸東京」のなかで触れましたが、住居は駒込林町でした。同じ町に住んだ二人が、同じ霊園に眠っていることになります。

♪駒込林町が、どの辺りであったかというと、医学図書館関係の方々には、日本医科大学図書館(千駄木1丁目)の近くといった方がわかりやすいかもしれません。かつて、この辺りは、東京帝國大學の住宅地として、文化人や学者が多く住んだ町でもありました。

♪千駄木5丁目(旧駒込林町)は、JR駒込駅前から東京大学本郷キャンパスに向かう本郷通りの左側に位置しており、高林寺(緒方洪庵墓所)と都立駒込病院の近くで、本郷通り、不忍通り、団子坂に挟まれた区域です。

♪千駄木の地名の由来は、太田道灌が栴壇(せんだん)の木を植えたためとか、一日に千駄(せんだ)の薪を切り出したためとか諸説があるようです。上野寛永寺創建後には、この林地を同寺に属し、徳川霊廟用の薪材をとらせたともいいます。(参考文献2、3)この辺りもバブルの影響で旧家が取り壊され、雑木林など昔の面影は残っていません。

(注)栴檀(せんだん):庭に植える落葉高木。夏の初め、薄紫の花を開く。皮・実は薬用。「栴檀(せんだん)は二葉(ふたば)より芳し(かんばし)[大きくなってから立派になる人は、小さい時分からすぐれた所が有るものだ]」

駒込吉祥寺境内にある栴檀の木(和田修平撮影)

♪近くの吉祥寺の山門には、「栴檀林」の額が掛けられていますが、ここに、現在の駒澤大学の前身のひとつである学寮(栴檀林)があったことをしめしています。

駒込吉祥寺山門 額「栴檀林」(和田修平撮影)

♪三上参次は、この町から、「お正月など大礼服を着て宮中へ二頭馬車に乗り参内していた」(参考文献1)といいます。また、この町へは、高村光太郎を訪ねて、草野心平や尾崎喜八などの詩人がやってきています。

♪高村光太郎は『智恵子抄』に収載されている「うた六首」のなかで次のように歌っています。


 「この家に智恵子の息吹みちてのこりひとりめつぶる吾をいねしめず」
 「光太郎智恵子はたぐひなき夢をきづきてむかし此所に住みにき」
 (昭和13年ころの作)。

♪高村光太郎・智恵子や三上参次に思いを馳せながら、駒込林町界隈を散策してみようと思います。

参考文献:

1)地域雑誌『谷中・根津・千駄木』其の二十八(谷根千工房、199

 2)『ぶんきょうの町名由来』(東京都文京区教育委員会社会教育課編、1984)

 3)『大東京の史蹟と名所』(復刻版)(佐藤太平著、博友社、1977)

(平成14年12月18日 記)(2020年5月24日 追記)