19. 「からたち寺」にぶつかる:漱石『三四郎』

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♪森鴎外の『雁』の主人公・岡田の散歩道に「臭橘寺(からたちでら)」が出てきます。今日、この「からたち寺」に偶然ぶつかりました。文献の中でのことです。

♪お昼休みに勤務先の女子医大を出て、夏目漱石にゆかりの夏目坂を下り、坂下にある本屋に向かいました。途中、次の連載のテーマを考えていました。夏目漱石、長與専斎に関係ある四谷の胃腸病院にしようか、それとも、「からたち寺」にしようか、などと思いながら、ぶらぶら降りていきました。

♪「からたち寺」については、どこかの文献で読んだおぼえがあったのですが思い出せません。本屋に入り、鴎外の文庫を探していて、司馬遼太郎の『本郷界隈』(街道をゆく37)(朝日文庫)(朝日新聞社)が目に入りました。この中に、「からたち寺」が載っていました。この『本郷界隈』は単行本では持っていたのですが、「からたち寺」が載っていることは、すっかりわすれていました。

♪「からたち寺」は、春日局(かすがのつぼね)(1579-1643)の菩提所である麟祥院(りんしょういん)(旧本郷区龍岡町 現文京区湯島4丁目)のことです。周囲がからたちの生垣でかこまれていたため、この名が出たといいます。

♪「からたち寺」は、漢字で「枳穀寺」とも書き、『三四郎』(漱石)の中に次のようなくだりがあります。

「二人はベルツの銅像の前から枳穀寺の横を電車の通りへ出た。銅像の前で、この銅像はどうですかと聞かれて三四郎はまた弱った。表は大変賑かである。電車がしきりなしに通る」

三四郎池の周辺

 

 

(平成14年7月3日 記)(平成29年7月4日 訂正・追加)