5.幕末の江戸で活躍する緒方洪庵:TBS 日曜劇場 「JIN -仁ー」

♪TBS系で「JIN ー仁ー」(全11話)という時代劇(ドラマ)が始まりました。

[原 作/村上もとか 脚 本/森下佳子 演 出/平川雄一朗・山室大輔・川嶋龍太郎 プロジュース/石丸彰彦・津留正明  時代考証/山田順子 主題歌/「逢いたくていま」MISIA(アリオラジャパン)

♪原作は、「スーパージャンプ」(集英社)に連載されているコミックだそうです。(全13巻のコミック文庫として完結しています)

 

♪大学付属病院の優秀な脳外科医である南方仁[みんかた・じん](大沢たかお)は、病にたおれた恋人の未来(中谷美紀)を現代に残したまま、文久2年(1862)の江戸の町にタイムスリップしてしまいます。

♪文久2年(1862)といえば、寺田屋事件や生麦事件が起こった幕末の動乱期。そこで、仁は、大坂から江戸へ幕府の侍医(医学所頭取)となるために出てきていた緒方洪庵(武田鉄矢)と知り合い、江戸で流行していたコロリ(コレラ)に、共に立ち向かうことになります。ドラマの第2話と第3話を見ました。

♪大坂で仕事は終わったとされる洪庵の元気な姿を、江戸の町中に見ることができるのは、SFエンタテインメントのよさであり、楽しいことです。

♪番組のタイトルバックは、現在と昔を対比させ、芝の増上寺、御茶ノ水周辺と思われる場所や、大川の橋や舟などを写し出しています。医療の精神は過去から現在に繋がっていることを表現しているようにも見えます。

♪洪庵のほかに、伊東玄朴や松本良順なども登場します。医史学監修は酒井シヅ先生(順天堂大学・医学部医史学・名誉教授)。医療指導・監修は冨田泰彦先生(杏林大学医学部・医学教育学・講師)。医学ドラマとしても、本格的です。

♪時代考証(山田順子)・歴史監修(大庭邦彦 聖徳大学・人文学部・日本文化学科・教授)も、しっかりしていて、コミックが本格的な時代劇に姿を変え、映像的にも、大変、美しい出来になっています。江戸の町並み、そして、通りの店の前には、箱看板を置くなど、美術にも力を入れているようです。

♪第3話:仁(大沢たかお)は、コロリ患者のために、洪庵に助力を請い、点滴の道具をつくり、治療にあたる決心をします。水に塩と砂糖を配合した点滴液を静脈に入れる。注射針や点滴瓶は、職人につくらせる。患者の救護所の野外設営と救急処置。医療的な設定も、本格的です。

♪仁は、患者を隔離して治療に専念するのですが、その仁自身がコロリに罹ってしまう。仁に好意を寄せる武家の娘である咲さき(綾瀬はるか)は、危篤状態に陥った仁を救おうと、仁に教えてもらっていた点滴の方法を、緒方洪庵が見ている前で、自分の手でやってみることにします。当時の女性としては、大変、勇気のある行動です。大腿静脈から、点滴を入れるシーンでの綾瀬さんの演技は、緊迫感のなかにも、落ち着きが感じられ、感動的でありました。咲の涙が仁の頬に落ち、命の点滴となって、仁を、あの世から呼び戻すことになるのでした。

♪ほかに、女優陣には麻生祐未さん(咲の母親、栄えい)、中谷美紀さん(仁の恋人・未来と花魁・野風[のかぜ]の二役)、男優陣には武田鉄矢さん(緒方洪庵)、小日向文世さん(勝海舟)、内野聖陽さん(坂本竜馬)など、個性的で実力派の俳優がそろっています。

♪次回のドラマの展開(脚本)と、それぞれの俳優の演技、そして、その舞台背景を観るのが楽しみになってきました。

♪心に残る台詞がありました。仁が、過去の時代のなかで、現代的な医療行為を行ない、人を救ってよいのか、歴史を変えてしまうことになるのではないかと、悩み、咲に、その思いをぶつける場面。
仁と咲の、長いセリフの、その一つひとつが生きていて、心に響きます。

:歴史は、おれのやっていることを、帳消しにするかもしれない。なにも変えないかもしれない。

:先生は、わたくしの運命を変えましたよ。脈打つ心の、音を感じます。咲は生きておりますよ。

♪今年のお正月には、NHKでも緒方洪庵をテーマにした「浪花の華―緒方洪庵事件帳―」が放映され、ドラマで、洪庵が注目された年であるようです。来年、平成22年(2010)は、緒方洪庵の生誕200年にあたります。

(平成21年10月30日 記)(平成29年4月9日 追記)

(令和4年12月29日 画像を追加)